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代表牛腸が執筆する税務ブログ
相続税の申告期限は10ヶ月!過ぎた場合はどうする?延長はできる?
家族などが亡くなって相続が開始されたとき、特に注意が必要なのが「相続税の申告期限」です。
申告義務があるのに期限までに申告をしていないと、思わぬ不利益を被ることにもなりかねません。
この記事では、相続税の申告期限や期限を超えた場合に生じるデメリット、期限を超えそうなときの対処法について解説します。
相続が開始したときに慌てないためにも、相続に関する基本知識を身につけておきましょう。
目次
相続税の申告期限は10ヶ月
相続税の申告期限は、「被相続人(=亡くなった人、財産を相続される人)が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月」です。
たとえば、2月20日に亡くなって当日に死亡を知った場合は、その年の12月20日が申告期限になります。
あくまで「知った日」が基準なので、必ずしも「亡くなった日」とは限りません。
死亡を知ったのが後日の場合には、「死亡した日」と「死亡したことを知った日」は異なります。
たとえば、海外赴任中の人が日本国内の家族が亡くなったことを死亡当日には知らず、数日後に連絡を受けて知るようなケースです。
親子関係が疎遠になっていて、親が亡くなったことを暫く知らなかったケースも該当します。
このような場合、あくまで「死亡したことを知った日」の翌日から10ヶ月後が申告期限です。
相続人(=財産を相続する権利を持っている人)が複数いるケースでは、被相続人の死亡を知った日が相続人によって違えば、相続人ごとに相続税の申告期限が異なるので注意しましょう。
土日祝日の場合は翌日が期限日
申告期限である「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月」にあたる日が土日祝日などの場合は、そもそも税務署がお休みで申告手続きができません。
10ヶ月にあたる日が土日祝日などの場合は、その次の平日が相続税申告の期限日になります。
つまり、10ヶ月後が土日祝日の場合でも、期限が直前の平日に前倒しになるわけではありません。
ただし、土日祝日にあたる場合でも極端に期限が伸びるわけではありません。
期限ギリギリではなく、余裕をもって早めに相続税の申告・納税を行うようにしましょう。
申告期限が延長される例外的なケース
10ヶ月という相続税の申告期限は、原則として延長されませんし延長もできません。
しかし、次のようなケースでは、事情を考慮して例外的に延長できることになっています。
該当する場合には、税務署に申請することで最大2ヶ月間の期間延長が可能です。
- 相続人に異動があった場合
- 遺留分侵害額請求が行われた場合
- 遺贈に係る遺言書が見つかった場合
- 胎児が生まれた場合
- 特定非常災害に指定された場合(申請不要)
例外ケース①:相続人に異動があった場合
相続人の異動とは、相続人の廃除や失踪宣告によって相続人の数が減るなど、何らかの理由で相続人の人数や対象者が変化することです。
この場合には、相続税の計算の基礎となっていた相続人の関係自体が変わって各相続人の相続税額が変わるため、期限の延長が認められています。
例外ケース②:遺留分侵害額請求が行われた場合
遺留分とは、遺産のうち一定割合を相続する権利として一定の親族に認められている権利です。
他の相続人が多く遺産を相続しても、遺留分までの割合は権利として主張し請求することができます。
この請求が遺留分侵害額請求で、遺留分侵害額請求が行われた場合には、各相続人の相続分が確定するまでは相続税の税額も確定できません。
そのため、この場合には税務署に申請することで申告期限の延長が認められています。
例外ケース③:遺贈に係る遺言書が見つかった場合
遺贈とは、遺言書を作成して財産の配分の仕方や渡す人を決める財産相続の方法です。
被相続人は、生前に遺言書を作ることで自分の意思を反映させることができます。
そして、遺贈では相続人だけでなく相続人以外の人に財産を渡すことも可能です。
遺贈に係る遺言書がある場合とない場合では、財産を受け取る人や受取額、相続税額が変わることがあるため注意しなければなりません。
仮に、遺言書がない前提で遺産分割協議を行ったり相続税額の計算を行っていた場合でも、途中で遺贈に係る遺言書が見つかると、財産の分け方が変わって相続税額に影響します。
そのため、遺贈に係る遺言書が見つかった場合も、申請することで申告期限の延長が可能です。
例外ケース④:胎児が生まれた場合
相続が開始された時点で胎児がいる場合、胎児が無事に生まれれば相続人として扱われ、死産の場合には相続人にはなりません。
胎児が生まれてくるまでは相続人の数が確定できず、相続税の税額計算などもできないことになります。
そのため、この場合も税務署に申請することで、申告期限の延長が認められています。
例外ケース⑤:特定非常災害に指定された場合
特定非常災害とは、大規模な災害が発生した場合に被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置を定めた法律です。
被相続人の住所が指定された被災地域あった場合、相続財産のうちに被災地域の一定の土地や株式がある場合に被害状況がわかるまで相続評価が困難になります。
そのため、国税庁告示によって定められた申告期限か、特定非常災害発生日の翌日から10ヶ月を経過する日とのいずれか遅い日まで申告期限が延長されます。
これについては国税庁告示により申告期限が延長されるため、延長のための申請は不要です。
相続税の申告期限を過ぎた場合のデメリット
相続税の申告義務があるにも関わらず期限までに申告をしないと、さまざまな不利益を被ります。
相続税の申告期限を過ぎた場合、一体どんなデメリットが生じるのかをしっかりと理解しておきましょう。
そして、相続税の申告・納税を必ず期限内に行うようにしてください。
デメリット①:相続税の特例制度が使えなくなる
相続税には、うまく活用すると節税につながるさまざまな特例制度があり、条件を満たしている場合にはぜひとも活用したいところです。
しかし、特例制度の中には、申告期限までに相続税の申告をすることが条件のものがあります。
たとえば、「小規模宅地等の特例」や「農地の納税猶予の特例」が該当し、申告期限後に相続税の申告を行った場合、これらの制度は利用できません。
これらの制度の活用を検討する場合には、相続税の申告期限までに手続きを終えることが重要です。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族が居住用・事業用などの目的で使っている土地が相続財産に含まれる場合に、相続税が安くなる制度です。
細かい条件があるため誰でも活用できるわけではありませんが、土地の相続税の課税価格が最大で80パーセント減額されるため、大きな節税効果を発揮します。
そして、制度を活用するためには、申告期限内に相続税の申告を行わなければなりません。
制度の適用要件を満たしているのに申告期限を過ぎてしまうと、できたはずの節税ができなくなって損をすることになってしまいます。
特例の条件に該当して節税ができる場合には、申告期限までに相続税の申告を行いましょう。
なお、相続人の間で行う遺産分割の話し合いが相続税の申告期限までに終わらない場合には、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出すれば、申告期限後でも特例の適用が可能です。
この点については、「相続税の申告期限を超えそうな時の対処法」で詳しく解説します。